国によってこんなに違う!? 世界5カ国のお正月料理を食べ歩き!-part2
文化や伝統によって表情がガラリと変わる世界各国のお正月料理。後編ではギリシャ、チベットのお正月料理や風習をご紹介します。
【ギリシャ】「ヴァシロピタ」にコインが入っていたらその年はラッキーガール
そして4軒目にやってきたのは蒲田にある「ギリシャ料理スピローズ」。店先の看板には「白亜の壁と紺碧の地中海へようこそ」と魅力的なキャッチフレーズが。
ドアを開くと、ギリシャのサントリーニ島の街並みをイメージした店内が広がっています。蒲田にいながらギリシャへ来たような気分!
「ギリシャにはどの家にも立派なオーブンがあるんです」と語るのは、乾 智(いぬい さとし)店長。
乾店長「ギリシャでは普段からオーブンを使って料理や焼き菓子を作ります。クリスマスから正月にかけて冬の時期に食べられる『ヴァシロピタ』もケーキ屋で購入するのではなく、自宅で作る家庭が多いですね」
こちらが噂のヴァシロピタ。 その昔、ギリシャのヴァシロスさんという男性が恵まれない子どもたちにお菓子やプレゼントを配り歩いていたのだそう。そんな、他者に施しを与え続けたヴァシロスさんが由来となり生まれたのが、このヴァシロピタというケーキなんです。
このヴァシロピタ、面白いのがケーキの中にコインが入れて焼かれているというところ。切り分けたときに、コインが入ったケーキに当たった人はその年、幸運が訪れると言われているそう。
胸を躍らせながら、ザックザック切っていくと……
あ! あった!(2切り目で)
包みを開くとユーロコインが! 本場ギリシャではコインはそのまま入れられているようですが、衛生上の問題でこちらではアルミホイルに包まれています。
ヴァシロピタは食べる順番にも決まりが。まずは世の中の恵まれない子供たちに、そのあとはお父さん、お母さんと食べていきます。
……ここでは、わたし1人なので切り分けた直後にすかさずバクッ。 しっとりとした生地が美味しい! 卵とバナナの風味が優しく口に広がります。紅茶を飲みながら優雅な昼下がりのおやつとして味わいたい、そんな一品です。
ちなみにバナナを足しているのはこちらのお店のオリジナルアレンジ。本場ギリシャでは、さらにシンプルな味わいなのだとか。
そして、乾店長におすすめされた、ギリシャの人々に最も親しまれているお酒「ウーゾ」もいただいてみることに。
最初は透明な液体のウーゾ。なんと氷が入ったグラスに入れ、冷やすことで、化学変化が起こり色が乳白色に変わるんです! なんとも、ギリシャらしいロマンチックなアルコールなんでしょう!
!?!!?
ミントの爽快感とともに口の中に広がる甘み。そしてやっぱり胸に広がる猛烈な熱さ。お酒が弱い私にとっては軽くパニックになる禁断のアルコールでした。
店舗情報
住所:東京都大田区蒲田 5-7-6
電話番号:03-6715-7629
【チベット】極寒の地で熱々のご馳走! 噛んだ瞬間、肉汁が溢れる「モモ」
最後にやってきた曙町にある「TashiDelek(タシデレ)」はチベット料理を中心とするエスニック料理店。店名の「タシデレ」とはチベットで「こんにちは」の意味。
店先や店内に飾られている色とりどりの旗は「ルンタ」と呼ばれるもので、チベットの街や山を彩っているそう。その1枚1枚には経文が書かれており、祈りが風に乗って世界中に届くように、という祈願が込められているのだとか。
そんなチベットの文化を教えてくれたのは、チベットで僧侶をされていた経験を持つオーナーのロサンさん。
ロサンさん「チベットのお正月は1日目は家族でお寺にお参りに行きます。2日目は家族で過ごし、3日目は『護摩(ごま)焚き』を行います」
いちじく舞「護摩焚き?」
ロサンさん「外で火を炊きそこへ供物を焚べていくんです。その土地の神様に供物を捧げる儀式のことを言います」
こちらが、チベットでお正月などの節目に食べられることが多い料理たち。まずは、手前に置かれたチベット料理の代表格「モモ」からいただいていきましょう。
モモの食材に使われているのはこちらのウシ科に属する「ヤク」のお肉。遊牧民の荷物を運ぶ役割も担っているそう。
日本ではヤクのお肉は手に入らないので、味わいが似ている牛肉で代用しているようです。
トマトベースのチリペッパーソースを乗せていただきます!
ハフハフハフ……あっつ……!
それもそのはず、標高4000メートルにも及ぶ極寒の地チベットでは、とにかく熱々な料理を振る舞うことがおもてなしとされているのだそう。
噛んだ瞬間にひき肉の旨味が凝縮された肉汁が溢れ、絶品。チリペッパーソースの後引く辛さで、食べ終わったあとも口の中の熱さが持続します。
そしてこちらは、チベットのお正月に作られる揚げ菓子の「カプセ」。ビスケットのような食感で、1個食べると、2個、3個と手が止まりません……!
甘く炊いたお米にナッツとドライフルーツを加えたのは、インドの伝統的なスイーツの「ハルワ」。例えるなら和菓子のおはぎのような風情があり、日本人でも親しみを持てる味です。
最後は、チベットのソウルドリンク「バター茶」でシメ。塩とバター、牛乳が入れられたこのバター茶を、チベットでは年がら年中飲んでいるのだとか。
……ホッ。
クリーミーで美味しい。お茶というよりかはスープのような感覚で飲め、みるみる身体が温まっていきます。チベットの広大な自然と大地を思い浮かべてみたりしました。
店舗情報
住所:東京都新宿区坂町 12-18 四谷坂町永谷マンション 1F
電話番号:03-6457-7255
世界を学ぶほど、日本の正月の文化を知りたくなる
日本にいながら、料理を通して5ヵ国の正月を楽しめた本企画。年の始まりを心地よくスタートするために、各国、それぞれ趣向を凝らしていました。
そんな世界のお正月を学ぶほど「私って日本の正月文化をきちんと知らずに今まで生きてきたんだなあ」と痛感しました。おせちやお雑煮の由来や意味、そこに込められた想いを知ることで、いつもより味わい深いお正月料理を食べることができるかもしれません。
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(ライター/いちじく舞 カメラ・編集/高山諒+ヒャクマンボルト)