【伝説のティーブレンダーに聞いた!】ティーバッグで10倍おいしい紅茶を飲む方法
入れ方次第で味に雲泥の差が生まれる紅茶。今回は、ティーブレンダー熊崎俊太郎さんにおいしい紅茶の入れ方、茶葉選びのコツを教わりました!
皆さん、紅茶、飲んでますか?
朝の起き抜けに、スイーツのお供に、休憩がてらに一杯など、さまざまなシーンで日頃から紅茶を飲むという方も多いのではないでしょうか。
そんな紅茶ですが、実は入れ方によって味が劇的に変わるってご存知でしたか?
かくいう私、ライターいちじく舞も紅茶が大好き。食後にはいつも紅茶を入れていて、紅茶と密に寄り添う暮らしをしています。
が!ただ、ガブガブ飲んでいるだけで通り一遍の知識しかありません。そこで今回は紅茶のプロを識者に迎え、普段何気なく飲んでいる紅茶をより美味しく飲む方法から、茶葉の選び方まで教えてもらって来ました!
インスタントと思うなかれ、ティーバッグは「網でできたティーポット」!
今回お邪魔したのがこちらの、ティーブレンダー熊崎俊太郎さんのアトリエ。
学生時代のカフェ巡りで、紅茶の魅力に心奪われ、自ら紅茶専門店を始めた後、紅茶輸入商社勤務を経て独立。現在は大学の講師や、紅茶関連の著書執筆や講演、オリジナル紅茶ブランド「フィーユ・ブルー」の開発責任者など、幅広く活躍されています。
いちじく「熊崎さん、紅茶がよりおいしくなる入れ方を教えてください!」
熊崎さん「そうですね。初心者の方は、まずティーバッグでおいしく紅茶を入れる方法を身につけるのが良いのではないでしょうか?」
いちじく「え!ティーバッグですか!確かにティーバッグは便利ですが、インスタントという感じで本格的な紅茶とは程遠いイメージがあります…」
熊崎さん「いえいえ、最近よく見られる三角形のティーバッグは、アクを閉じ込め、紅茶のエキスを効率的に抽出する構造になっていて、これを専門家は”網でできたティーポット”と考えているんですよ」
なるほど、ティーバッグは利便性を考えられた作りになっているんですね。いつも使っているティーバッグで美味しい紅茶が飲めるなら、そんな好都合なことはないですよね!
あなたもやってしまっているかも!?紅茶の入れ方NG例
熊崎さん「ティーバッグでおいしい紅茶を入れる方法を教える前に、まずはいつも通りの紅茶の入れ方を見せていただけますか?」
いちじく「か、かしこまりました!」
まず、ティーバッグをカップの中に入れ、上からお湯を注ぎ…
お湯の中で、ティーバッグを振り、紅茶の色がしっかり出て来たところで、ティーバッグを引き上げて終了!
いちじく「この後、同じティーバッグで2杯〜3杯飲み続けます。もう最後の方は出がらしだと分かっていますが、色が付いていれば飲んじゃいます」
熊崎さん「なるほど。ついついやってしまいがちですよね。それでは、おいしい紅茶の入れ方をお教えしていきます!」
ポイントを抑えれば誰でも簡単!美味しい紅茶の入れ方
熊崎さん「まずはカップに少量のお湯を入れ、カップを温めておきます。その間に、ティーバッグ軽く広げて少し振りましょう。そうすることで、中の茶葉がほぐれ、渋味や苦味の原因にもなる”微粉”が外に落ちてくれるんです」
いちじく「ふむふむ」
熊崎さん「事前にカップを温めるために入れておいたお湯を捨て、新たに沸騰したお湯を注ぎます。その直後にティーバッグを投入。ここでティーバッグを振りたくなってしまいますが、じっと我慢です」
いちじく「お湯の中でティーバッグを振ったらだめなんだ…!」
熊崎さん「このとき、カップの下から温度が逃げないようにタオルなどを敷いておきましょう」
熊崎さん「次にカップに蓋をし、蒸らします。茶葉がティーバッグの中で踊っているのがわかりますか?これが”ジャンピング”という現象です。2分ほど経ったら、蓋を開けて様子を見ると…」
いちじく「あ!三角形のひとつの角に泡が溜まってる!」
熊崎さん「これがアクです。抽出が終わったら、このようにティーバッグの角が水面に出てくるので、さっと引き上げましょう」
熊崎さん「ティーバッグを水面から引き上げたところで、軽く揺らし、しずくを切ります。お湯の中で振ってしまうと、不要なアクまで一緒に滲み出てしまうので注意してくださいね」
いちじく「あばばば、最初から最後まで目からうろこの連続でした!順序をまとめてみると…」
【正しい紅茶の入れ方】
1, 事前にお湯を少量入れ、カップ全体を温めておく
2, ティーバッグを広げ、茶葉をほぐし微粉を落とす
3, 温度が冷めないようにカップの下にタオルを敷く
4, 一度お湯を捨て、沸騰したお湯を再度カップへ注ぐ
5, 直後にティーバッグを入れ、蓋をして蒸らす
6, ティーバックの角が水面に上がったら引き上げる
(おおよそ1,5〜2分)
7, ティーバッグをお湯から引き上げた後にしずくを切る
【誤った紅茶の入れ方】
1, 温めていないカップをそのまま使用
2, ティーバッグを入れた後にお湯を注ぐ
3, ティーバッグをお湯の中で振る
4, 蒸らさずティーバッグを引き上げる
5, 同じティーバッグで2杯目を飲む
こうして見ると間違った方法を丁寧に網羅しながら、この20ウン年間、紅茶を口にしてきた事実に驚愕…。では早速【正しい紅茶の入れ方】で入れた紅茶と【誤った紅茶の入れ方】で入れた紅茶を飲み比べてみましょう!
同じ茶葉なのに…入れ方次第で味が全く変わる不思議!
右が【誤った紅茶の入れ方】で入れた紅茶、左が【正しい紅茶の入れ方】で入れた紅茶です。比較してみると、若干、右の紅茶の色が薄いような気がしますが、目視ではそれほど違いは感じられません。
では、まず【誤った紅茶の入れ方】で入れた紅茶を飲んでみましょう。ゴクゴク…
いちじく「うん。紅茶、いつも飲んでいる紅茶。まごうことなき紅茶の味」
次に、【正しい紅茶の入れ方】で入れた紅茶を飲んでみましょう。ズズズ…
いちじく「…うわ!全然違う!豊か!口に含んだ瞬間、芳醇な香りが口の中全体に広がる。さらにコクと旨みが倍増して、奥深い味わいに変化しました。すごい!」
熊崎さん「そうなんです。同じティーバッグで入れた紅茶とは思えないほど、風味に違いが生まれますよね。先ほどの手順は色だけでなく、味と香りをしっかり出すためのものなんですよ」
コレを買っておけば間違いない!紅茶の茶葉3種類
美味しい紅茶の入れ方をレクチャーしてもらった後は、紅茶の茶葉の選び方を学んでいきます。
・右上のアッサムは、インドで採れる茶葉。まろやかなコクがあり色味も濃い赤茶色です。ワインで例えると、ドシンと重めの料理にも合う赤ワインでしょうか。
・左上のダージリンも同様にインドで採れる茶葉ですが、アッサムや他の茶葉と違い、すっきりとした味わいで、薄いのが特徴です。白ワインのようにあっさりとした料理やスイーツに合いますよ。
・下のセイロンは、世界中で親しまれているスリランカ(セイロン島)産の茶葉をブレンドしたものなんです。爽やかでさっぱりとした”THE紅茶のスタンダード”という風味ですね」
いちじく「お歳暮なんかでもらう紅茶セットには必ずと言っていいほど入っているラインナップですね!ちなみに、紅茶と言ったらスイーツと一緒に飲むことが多いと思うのですが、それぞれどんなスイーツが合うのでしょうか?」
熊崎さん「そうですね…アッサムは右上のキャラメルクッキー、ダージリンは左上の和三盆、セイロンにはプルーンなんていかがでしょう?」
いちじく「全然違う毛色のお菓子ですね!」
熊崎さん「ぜひ、それぞれのペアリングを楽しんでみてください!」
まずは、アッサム×キャラメルクッキーコンビから。
熊崎さん「キャラメルの香ばしさとアッサムのほどよい甘みがマッチしますよ。また、アッサムはクリームたっぷりの洋菓子などにも合いますね」
いちじく「あ、本当だ!アッサムは舌に残る焼き菓子の甘さに打ち勝つような強さがありますね。だから、コクのあるスイーツともバランスが均等に取れるんですね」
次は、ダージリン×和三盆。洋菓子と和菓子という一見するとミスマッチにもみえるこのコンビ。少し疑いつつ、試してみたいと思います。
熊崎さん「ふんわりとした甘みを持つ優しい味の和菓子と、ダージリンは相性が良いはずですよ」
いちじく「…!上品な甘さが口の中で溶けていく和三盆と、ダージリンはわびさびを感じさせるコンビです。和菓子がこんなにも合うなんて!」
熊崎さん「包容力のあるセイロンはフルーツが持つ酸味をうまく包み込み、まとめ上げてくれます」
いちじく「おお!フレーバーティを飲んだ後のトロピカルな余韻を感じさせます。どんな相手にも対応できるセイロンの懐の深さがわかりますね」
おいしい紅茶の入れ方を身につけ、さらに味わい深いティータイムを
と、愕然とした今回の企画。ほんの少しの手間で、茶葉が持つポテンシャルを何倍にも底上げできることに驚き、そして感動しました。これからは堂々と紅茶好きを自称できそうです。
ぜひあなたも、おいしい紅茶の入れ方を身につけ、シーンに合った茶葉セレクトし、味わい深いティータイムを過ごしてくださいね!
(ライター/いちじく舞 編集・カメラ/高山諒+ヒャクマンボルト)