おせち料理に「煮しめ」が入っている意味・由来と作り方
おせち料理の中でも「煮しめ(筑前煮)」は、各家庭の味が色濃く出やすい料理です。お祝い料理としては、どんな意味・由来(いわれ)があるのでしょうか?レシピや残ったときのアレンジ・リメイク方法、さらに地方ごとの特徴についても解説します。
おせち料理の中でも「煮しめ(筑前煮)」は、各家庭の味が色濃く出やすい料理です。お祝い料理としては、どんな意味・由来(いわれ)があるのでしょうか?レシピや残ったときのアレンジ・リメイク方法、さらに地方ごとの特徴についても解説します。
おせち料理の元祖!?煮しめの意味・由来(いわれ)
旬の食材や山の幸をたっぷりと使って作った煮しめは、日本古来より伝わる家庭料理の一つです。
「煮しめ」という名前の由来は、“煮汁がなくなるまで時間をかけてじっくりと煮る”という調理法の「煮しめる」からきています。一説には、おせち料理の元祖とも言われており、お正月はもちろん、祝い事や節句など、人がたくさん集まるときにも振る舞われてきた縁起の良い料理です。
おせちに欠かせない煮しめは、重箱の三段目(参の重)に入れる定番料理です。根菜類やこんにゃく、鶏肉、椎茸など、様々な食材を一緒の鍋で煮ることから、“家族が仲良く一緒に結ばれ、末永く繁栄しますように”という願いが込められています。
さらに、入っている食材一つひとつにも意味が込められているので、いくつか紹介します。
入っている中身とそれぞれの意味(いわれ)
子宝・子孫繁栄を願う「里芋」「八つ頭」
里芋は、種芋にたくさんの子芋が付くことから、子宝に恵まれますようにという願いが込められています。また、里芋の一種である八つ頭は、子宝や子孫繁栄の意味の他にも、「八」に末広がりの意味をかけ、縁起の良い食べ物として使われています。
根を張り、一家の繁栄を願う「ごぼう」
ごぼうは、地中深くまでしっかりと根を張る野菜のため、そこから転じて家族や家業の土台が安定し、その土地に根を張って末永く繁栄するようにという意味が込められています。
また、「たたきごぼう」は豊作を象徴する瑞鳥(ずいちょう)に似ていることから、豊作豊穣の意味も含まれています。
先を見通せるように願う「れんこん」「ふき」
れんこんやふきは穴が空いていて先が見えることから、将来の見通しがよくなりますようにという意味が込められています。さらに、ふきは「富貴」とも書けることから、生活の豊かさを願う意味があります。
長寿の縁起物・亀に見立てる「椎茸」
昔は椎茸を採るのが難しく高級品だったため、祝い事や正月などの特別な日に縁起物として用いられてきました。おせちでも様々な料理に使用されており、六角形の形に飾り切りし、亀の甲羅に見立てて使われることも多いです。
「鶴は千年、亀は万年」と言うように、亀は長寿の象徴とされており、長生きできるようにとの願いが込められています。
おめでたい梅に見立てる「人参」
梅は、寒い冬から春にかけて他の花々よりも早く咲くことから、古来より縁起物として愛されてきました。そのようなおめでたい梅花の形になぞって人参を飾り切りしたものを「ねじり梅」といい、生活の豊かさを願う意味が込められています。
良縁・円満の縁起担ぎ「こんにゃく」
真ん中がねじれたこんにゃくは、手綱に似ていることから「手綱こんにゃく」と呼ばれています。その結び目と “縁結び”をかけて、良縁や夫婦円満の縁起物として用いられています。また、武家社会の名残で、手綱を締めるように心を引き締めて、己を戒めるという意味も込められています。
出世を願う「くわい」
くわいとは冬野菜のひとつで、大きな芽が出ることから出世の願いが込められています。また、「芽が出る」と「めでたい」をかけて縁起物としても用いられています。
簡単おすすめ!白だしを使った京風煮しめのレシピ
煮しめなどの煮物は味付けが難しいという方には、市販の白だしを使った人気のレシピをご紹介します。白だしは、具材の色を染めずに煮込めるため、見た目は鮮やかなまま深い味わいに仕上げることができます。
手順はいたってシンプルなので、料理初心者の方でも簡単に作れますよ。お正月はもちろんのこと、日常の献立や精進料理としてもおすすめです。
材料(4人分)
白だし…50cc
みりん…大さじ1
砂糖…大さじ1
水…2 カップ
お好きな具材(里芋8個、ごぼう1/2本、たけのこ1/2個、こんにゃく1/2枚、れんこん1節、人参1/2本、干し椎茸4枚、きぬさや12枚、など)
塩…適量(茹でる用)
作り方
1・里芋は六角に皮をむき、塩でもんでぬめりを取る。たけのこは一口大に切り、白いアクを水で洗い流す。
2・ごぼうは洗って皮をこそげ取り、乱切りにする。れんこんは輪切りにして花形に切る。それぞれ水につけておく。
3・こんにゃくは塩でもみ洗いし、真ん中に切り目を入れて手綱の形にする。干し椎茸はぬるま湯で戻し、亀甲形に切る。人参は輪切りにして、梅花の形に飾り切りする。
4・里芋、たけのこ、こんにゃくを鍋に入れて下ゆでし、ザルに上げて水を切っておく。
5・大き目の鍋に塩以外の調味料と下準備した1~4の具材を入れ、ひと煮立ちしたら落とし蓋をして弱火で20~30分ほどじっくり煮込む。
6・煮込んでいる間に、きぬさやの筋を取り、下ゆでしておく。
7・具材に火が通ったら鍋のまま冷まし、彩りよく盛り付けて、6を飾る。
野菜の飾り切りはクッキー型や彫刻刀を使って簡単に!
人参やれんこんなどの野菜の飾り切りは、初心者には少し難しいかもしれません。そんなときには、クッキー用の抜き型や彫刻刀を使うと簡単にきれいな飾り切りが出来上がります。 飾り切りはおせち料理だけでなくお弁当や普段の料理をぐっと華やかにしてくれるので、ぜひ、ご家庭でも試してみてください。
煮しめはいつ作るのがベスト?日持ちはするの?冷凍できる?
煮しめなどの煮物料理は、ついついたくさん作ってしまうので、冷蔵庫に入らないこともよくあります。大晦日は忙しくて手の込んだ煮しめは作れないから、30日のうちに作ってしまうという人も多いかもしれません。
そうなると心配なのは、賞味期限です。おせち料理は、元々保存食として作られており、お正月の三が日には女性が休めるようにと日持ちのする濃い味付けにしていました。
そのため、しっかりと水分を飛ばした煮しめなら、鍋のまま常温に置いても3~4日は食べることができるでしょう。
ただし、菌の繁殖を防ぐために1日に数回は、火を入れておくことをおすすめします。しっかりと火入れをしておけば、30日に作っても三が日は安心して食べることができるでしょう。
それでも余ってしまうという場合は、煮しめをリメイクした炊き込みご飯やカレーなどのアレンジ料理がおすすめです。冷凍保存すると根菜類の味や触感が変わってしまうので、アレンジ・リメイクをして、食べきってしまいましょう。
地域別・煮しめの特徴
煮しめは、家庭によって味付けや入っている具材が異なるため、「おふくろの味」としても親しまれてきました。
家庭ごとの違いだけでなく、その土地で取れた野菜や特産物を使って作られてきたことから、地域によっても様々な特色があります。各地方でお正月に食べられている煮物料理の一例を紹介します。
北海道は「うま煮」と呼ぶことも
北海道では煮しめのことを「うま煮」と呼ぶ地域もあります。甘いや旨いなどの「うまし」が由来となっているようで、甘めの味付けが特徴です。
地域で採れた昆布やふきなどの山菜の他、鶏肉、なるとなどの練り物を入れる家庭もあります。
青森など東北では焼豆腐と山菜たっぷりの精進料理
青森などの東北地方の煮しめは、根菜類の他にぜんまいやわらびなどの山菜や焼き豆腐、油揚げなどをたっぷりと入れる精進料理です。食材は下茹でせずに、だし汁に煮えにくい野菜から入れていき、砂糖・酒・醤油で豪快に味付けをするという家庭も多いようです。
関西風は薄口しょうゆが決め手。京都では生麩入りも
関西風の煮しめは、薄口しょうゆを使い、野菜の色をきれいに引き出すのが特徴です。少し濃い目の味付けも多く、丁寧に取った出汁に干し椎茸の戻し汁などを加えて、しっかりとした味に仕上げます。
京都では生麩入りの煮しめもあり、生麩の煮汁も加えて上品な味付けとなっています。
筑前煮のルーツは福岡の「がめ煮」?鹿児島では「しゅんかん」
同じ煮物料理のため、煮しめを九州の郷土料理である「筑前煮」と呼ぶこともありますが、作り方や材料が異なります。
筑前煮のルーツは、九州北部の郷土料理「がめ煮」で、元々はすっぽんとありあわせの野菜で作る料理でした。名前の由来としては、すっぽんの「亀煮」が「がめ煮」になったという説や、「寄せ集める」という博多弁の「がめくり込む」から取ったという説などがあります。
筑前煮やがめ煮の作り方は、煮しめとは異なり、最初に具材を油で炒めてから鍋で煮込みます。煮しめよりも汁気が多く、あごだし(トビウオの出汁)で煮ふくめることもあるようです。がめ煮と筑前煮はほとんど同じですが、がめ煮には骨付きの鶏肉を入れる地域もあります。
また、同じ九州でも南部の鹿児島では、鶏肉ではなく豚ばら肉を使った「しゅんかん」と呼ばれる煮しめがお正月の定番となっています。
さいごに
煮しめは、家庭や地域によって様々な味わいがあります。「家庭の味」として子供たちに伝えていくためにも、お正月には手作りしてみるのも良いかもしれません。
使う食材や調味料の量は決まってはいませんので、基本を押さえながら、家庭ごとの味を楽しんでみてください。
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