一番オシャレなラベルはどれ? デザイナーが選ぶ『日本酒ラベ1グランプリ』
「獺祭」ブームも久しく、女性や若者の間で、もはや定番になりつつある日本酒。 お店で嗜むのはもちろん、贈りものや手土産としても重宝されます。 ただ、お店に足を運んでもズラッと並んだ日本酒の種類や銘柄を前にすると、その豊富さに何を選んだらいいのかよくわからなくなってしまうという方も多いのではないでしょうか……?
2017年8月25日
Produced by ぐるすぐり食マガジン
「獺祭」ブームも久しく、女性や若者の間で、もはや定番になりつつある日本酒。
お店で嗜むのはもちろん、贈りものや手土産としても重宝されます。
ただ、お店に足を運んでもズラッと並んだ日本酒の種類や銘柄を前にすると、その豊富さに何を選んだらいいのかよくわからなくなってしまうという方も多いのではないでしょうか……?
そんなときに注目したいのが、ラベルです!
伝統的なデザインはもちろん、最近ではワインのような洋風なものから、個性的なものまで、多種多様のデザインが施されているラベル。
「日本酒の顔」ともいえるラベルには、味の特徴を表すようなヒントや、作り手の思いが込められています。
今回は、パッケージデザインや広告のデザインといった、いわば商品・サービスの顔を手がけてきたグラフィックデザイナーを3名お呼びし、ぐるすぐり内で購入できる日本酒をそれぞれ一品、CDをジャケ買いするかのように「ジャケ呑み」していただきました。
なぜそのラベルに惹かれたのか、そこにはどんな意図が込められているのかなど、デザインの観点から語っていただき、実際に飲んでいただきます!
▲写真左から、増山さん、金浜さん、斎藤さんのお三方
今回参加していただくのは、3名のデザイナーさん。
増山さん
フリーランスデザイナーとして活躍する若手デザイナー。印刷物のデザインからUIデザインまで幅広く手がけている。
金浜さん
都内のデザイン会社で広告やCDジャケットのデザイナーとして活躍している女性デザイナー。
斎藤さん
都内の大手デザイン会社に勤務し、雑誌中心に活躍するベテランデザイナー。都内の美術学校で講師としても教鞭をとっている。
1.シンプルだけど、絶妙なカラーバランスの『本醸造 津軽 じょっぱり』
トップバッターは一番若手であり、紅一点の金浜さん。
金浜 皆さん、今日はよろしくお願いします。私が選んだのは『本醸造 津軽 じょっぱり』です。
金浜 これは絶妙なバランス感がすごくて。まず最初はだるまが目を引くんです。
斎藤 確かにこれはインパクトがあって、気になっちゃうね〜。
金浜 でも上部の赤・黒・青のカラーリングがポップで、伝統的な堅い印象を和らげているんですよ。この絶妙なバランス感が、地方のお土産のようなゴテゴテなデザインになりすぎず、オシャレにまとまっていて、つい買っちゃいました。
増山 この赤、黒、青っていう三色の組み合わせは確かにあんまり見ないよね。珍しくて見ちゃうな。
金浜 普通だったら赤と黒で統一しちゃいそうなのに、なんで青を入れたんだろうって気になっちゃいますよね。
斎藤 もしかしたら狙って配色したわけではなくて、あまり考えずに、純粋に作ったのかもしれないね。
金浜 そうそう、素直な感じがあるんですよね。デザインを頑張りすぎてない、シンプルな感じがいいんですよ。
斎藤 青森にいる僕の知り合いが「じょっぱり」ってよく言うんだけど、向こうの言葉で「意地っ張り」とか「頑固者」とかっていう意味らしいんだよね。
金浜 この歯を食いしばっているような顔が見事に「じょっぱり」を表していますよね。この顔、「温湯(ぬるゆ)こけし」っていう現地のこけしのお腹に描かれたダルマらしいんですよね。
増山 でもこれ、男性ウケしそうなデザインなのに、金浜さんが選んだのは意外。
金浜 こういう無骨なイラスト、逆にかわいいと思っちゃうんですよね。
増山 一見いかついけど、よく見るとかわいいよねこの顔。しかし、これどんな味がすると思う?
金浜 ラベルに惹かれて直感で選んだんですが、このデザインの感じだとスイスイ飲める感じではないかもしれないですね。クセが強いかもしれません。飲んでみましょうか。
ラベル同様にクセのある味? ジャケ呑みスタート!
▲「一升瓶から注ぐのは難しいですね」と慣れない様子の金浜さん
ラベルの印象と味の違いをチェック。これがジャケ呑みの楽しいところ
金浜 わっ、すごく力強い味がします! やっぱり、これはラベルの通りですね!
増山 たしかに最初の一口飲むはすごいインパクトがあるけど、あとはキレが効いて、爽やかに味が引いていきますね。
斎藤 うん、確かに。意外と硬派すぎる感じはなくて、後味は柔らかい。
増山 でも確かに味のインパクトがあるから、日本酒の中では味が濃いのかも。青森は寒いところだから、しょっぱいものとか甘いものに合うようにしているのかもしれないね!
金浜 このラベルだからかなりクセが強いのかなって思ったんですが、意外とそんなことなく飲めちゃいましたね。
2.日本酒っぽくないデザインが話のネタになる『FISHERMAN SOKUJO Deep』
続いては、若手デザイナー代表の増山さん。
増山 僕が選んだのはこちらの『FISHERMAN SOKUJO Deep純米吟醸原酒』です。
金浜 すごい! 赤い! なんでこれを選んだんですか?
増山 これ、全然日本酒っぽくないデザインが面白いなーと。僕の周りには日本酒を飲む人あまりいないんだけど、家で飲むときにこれ持っていったら「これなに? 日本酒なの?」ってみんな興味持ってくれると思うんですよね。そんな話題作りに一役買ってくれるデザインかなって。
金浜 これが日本酒っていうのにまず驚きです! 一瞬ロゼとかシャンメリーなのかなと思っちゃいます。英語で表記されているのも、やっぱり海外を意識しているんですかね。
増山 最近だと海外を意識して、ワインっぽいデザインにしているのをよく目にするようになったけど、これもワインっぽく見せたいというオーダーがあったのかもしれないですね。
金浜 クライアント側の要望を想像するのはデザイナーの癖ですね(笑)外国人の友達にあげるのもいいかもしれないです。
斎藤 それにしてもミステリアスだよね。日本酒のラベルってその日本酒の特徴を表したりするんだけど、これは全く味が想像できない。
金浜 そうですよね。この船とか、カニとか唐突にあって、謎ですね。でも謎だからこそ、「カニの味がするのかな?」とみんなで言いながら飲むのが楽しそう!
増山 調べてみると、これ魚介類とか甲殻類に合う日本酒らしいんですね。
金浜 へえ〜! そんな日本酒があるんですね。カニパーティーに持って行ったらぴったりですね。
増山 企画ありきで持っていくのはいいかも! 「みんなでカニ食べようよ」って誘う口実にもなるし。あとはお世話になった人に、カニと一緒に贈るとかもオシャレだね。
金浜 今日本酒って流行っているし、お店にはいろんな種類あるんですが、正直なにがなにやらわからないんですよ。このラベルのように「どんな料理に合うのか」がデザインされていたら非常にわかりやすいですね。
斎藤 そう考えると、このラベルみたいに明確なターゲットとかコンセプトがあった方が、刺さりやすいのかもしれないなあ。
増山 じゃあ実際に『FISHERMAN SOKUJO Deep』、開けていきますね。
奇抜なのは見た目だけじゃない!? カニに合うお酒の味とは?
増山 あっこれ注ぎ口が透明だ! ボトルを赤く着色してたんだ!
斎藤 ここから透明なものが出て来るのはやっぱり不思議だなあ。
増山 注いでみても全く味が想像できないんですが、飲んでみます。
増山 ん? これなんだろ。なんとも表現できない!
金浜 わっ、香りが強いですね! 味は……確かに一口じゃ表現できない!
斎藤 これなんだろうねえ。今まで飲んだことない味がする。つい二口飲んじゃうなあ。
増山 ワインっぽいというか。柑橘っぽいというか。口に入れた瞬間は尖った味がするんですが、後味はスッキリしてますよね。
斎藤 柑橘系の味がするよね。まさかオレンジピールとか入ってるのかなあ。
金浜 最初は日本酒っぽくなくてびっくりするけど、飲み進めると美味しい。でも……これカニに合うんですかね?
斎藤 カニってわりとあっさりだから日本酒側が勝っちゃうかもしれないよね……。カニに合うかどうかは食べてみないとわからないな〜。
増山 でもこれ、このデザインにして正解だよね。普通のデザインの瓶に入ってたら味の奇抜さに驚くけど、この奇抜な瓶だから納得するよね。
3.トラディショナルさで貫禄を放つ『朝日山 万寿盆』
斎藤 じゃあ最後は僕から。僕が選んだのは『朝日山 万寿盆』です。
斎藤 朝日山シリーズのレトロなデザインがいいなと。中でもこの万寿盆は渋くて、堂々としてるんだよね。『朝日山 千寿盆』は紅白の派手な感じだったから、次の「万」はもっと派手なのかと思いきや、逆に渋いっていうのが面白くて、今回取寄せてみました。
増山 実物をみて、どうですか?
斎藤 意外とトラディショナルなデザインなんだなって思ったね。この「朝日山」の文字の周りの絵柄とか、Illustratorで書いたようなカリッとした線だと思ってたら、手書きの線だったし。こういった細かな仕事で全体の印象がガラッと変わるんだよね。
増山 これがIllustratorで無機質に書かれてたら、今っぽい印象になるんだろうなと思います。いずれにしても、これは大人な方が似合うイメージがありますね。
斎藤 そうだね。プレミアム感を演出してくれるデザインだから、お祝いとか特別なシーンにいいかもしれない。シャンパンでいう『ヴーヴ・クリコ』とか『モエ・シャンドン』とかそんなイメージ。
金浜 私、この「朝日山」っていうタイポグラフィが気になりました! このひげ文字(※)って日本酒でよくみかけるんですけど、貫禄があって、美味しそうに見えないですか?
※ひげ文字……かすれの筋が特徴の、力強い筆跡を残すタイポグラフィのこと。
増山 ひげ文字が美味しそうなの、すごいわかる! あと、この瓶の磨りガラスも、マット感が出て、繊細な味がしそうに見えるんですよね。
斎藤 フォントや瓶の質感の1つひとつが、味をイメージさせるヒントになってるんだよねえ。
それじゃあ、飲んでみましょうか。伝統的なデザインだからやっぱり力強いのかな〜。
渋めの見た目の割に実は……ギャップが楽しめる意外な味?
金浜 あっ! すごいフルーティで飲みやすい!
斎藤 口当たりがまろやかで、スルスルいけちゃうね。これは……気づいたら酔っ払ってるやつだ。
増山 あー……ほんと柔らかいですね。家でリラックスしながら飲むのもいいですね〜。ラベルからはこの柔らかさは想像できなかったです。このギャップがまた好印象ですね。
予想外な味も、「ジャケ呑み」の楽しみの1つ
今回はプロのデザイナーさんたちに、作り手の意図をラベルという観点から予想していただきました。
ラベルのイメージ通りの味がするものや、逆に想像もつかなかった味のものまで、デザイナーも驚く発見がそこにはありました。
つくり手が工夫をこらしたラベルを直感で選ぶ楽しさも、日本酒の面白さなのかもしれません。
お店やネットショッピングで、日本酒をどう選んでいいかわからないというビギナーの方も、いつも決まった銘柄を飲んでしまう方も、ぜひジャケ呑みを試してみてはいかがでしょうか!
(ライター・カメラ/高山諒 編集/ヒャクマンボルト)
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