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ビアスタイルがポイント! ビアジャーナリスト宮原佐研子が教える クラフトビールのおいしい選び方  Vol.1ピルスナー・IPA編

公開日時:2018/12/13 00:00  更新日時:2018/12/13 09:25

ワインは、赤、白、ロゼやブドウ品種で選ぶように、ビールもビアスタイルで選ぶ時代になりました。でも、世界には100種類以上のビアスタイルがあって、迷ってしまうことがあるのも事実。ちょっとした知識さえあれば、今日のあなたの気分や大切なあの人にぴったりのビールを選ぶことができます。ビールのことならおまかせあれ!のビアジャーナリスト・宮原佐研子が、選び方のポイントを楽しく、美味しく教えます。

夏といえばビール! そこで気になるのは、昨今話題のクラフトビールです。
そもそもクラフトビールとは? 世界で最もクラフトビールが盛んなアメリカでは「小規模(※1)で、独立(※2)していて、そして伝統的(※3)であるブルワリーで造るビール」と規定されています。
今や日本でも長崎県以外のすべての都道府県でクラフトビールが醸造されていて(※4)、世界のコンペティションで認められた日本生まれのクラフトビールもどんどん登場しています。

※1 約70万キロリットルまで
※2 他の酒造メーカーに属していない
※3 麦芽100%のビールを主力商品にするなど
※4 2018年7月現在

ザ・定番のピルスナー! 実は今マニアに大注目のビアスタイル

日本人が、一般的なビールをイメージした時に思い浮かぶ、あの黄金色がピルスナーです。
ビールは大きく分けると、主には下面発酵するラガー酵母で造るラガービールと、上面発酵するエール酵母でできるエールビールの2種類があります。
そのラガービールの代表と言えるのがピルスナーで、現在、世界のビールのおよそ70%を占めているのが、このビアスタイルです。ピルスナーには、チェコで誕生した麦芽の旨味も楽しめるボヘミアン・ピルスナー、そしてドイツ生まれですっきりした苦味が魅力のジャーマン・ピルスナーがあります。
私たちにとって一番親しみのあるこのピルスナーですが、様々なビアスタイルを味わい尽くしたビアマニアたちが、今改めて大注目しているのもこのピルスナーなのです。

ちなみに一人当たりのビール消費量が一番多い国は、24年連続でチェコが第一位(※5)! 日本の約3.5倍、世界第4位のドイツの約1.4倍という驚きのダントツさです。
チェコ・プラハで有名なビアパブといえば「ウズラテホ・ティグラ(黄金の虎)」。以前訪れた憧れのその店は、席に着くなりオーダーせずともチェコの人気ピルスナービール「ピルスナー・ウルケル」がドンっと1杯。飲み干すとまた1杯…。
お店の人が、脇に置いた紙切れに杯数をタリー(日本でいう正の字のようなもの)で1杯毎に線を書き入れながら、まるでわんこそばのように新たなビールを持ってきます。オーダーをストップしたいときは、ジョッキの上にコースターを置くこと! 
ほかにも黒ビールが最高に美味しい、プラハ最古のビアホール「ウ・フレクー」や、ヨゼフ・ラダのイラストが店内の壁面いっぱいに描かれた「ウ・カリハ」も、プラハに行けば必ず訪れます。
ビールを飲んでいると、アコーディオンの楽隊が回ってきて、気づけば周りのみんなと肩を組んで飲んで歌って…! プラハの夜、私は毎回一晩に軽〜く10杯は飲んでいますが、それはきっとチェコのせいなのです。

※5 「キリンビール大学」レポート2016年 世界主要国のビール消費量 より

▲(左)ピルスナーの黄金色。チェコの軟水で偶然生まれた色は、ボヘミアングラスに注いたことでさらに魅力が輝いたそう
▲(右)ビールの色は麦芽の焙燥による色の違いで変わるのが一番の要因。ピルスナーは色の淡い麦芽を使う

▲「ウズラテホ・ティグラ(黄金の虎)」のコースターや、「兵士シュヴェイクの冒険」の主人公のイラスト「ウ・カリハ」のショップカード、チェコの郵便局で買ったビールの切手など、愛らしいデザインでついつい集めてしまいます

京都丹後クラフトビール ピルスナー(京都府京丹後市・日本)

京都北部の西日本最大級の道の駅・丹後王国 食のみやこ内で醸造するビール。地元京丹後には、7人のお姫様にまつわる伝説があり、定番ビール7種類に“丹後七姫”が描かれ、ピルスナーは羽衣天女をまとっています。
黄金色に輝くこのビールは、チェコの香り高いホップを使用したボヘミアンスタイル。蜜のようなまろやかな香りと麦芽のふわりとした甘さがあり、苦味は控えめ。天女のような優しさを感じる味わいは、多くの人に愛される美味しさです。
ビールが1本ずつ入る専用箱もあり、セットはもちろんビールが好きな人へのさりげないプレゼントにもぴったりです。

イェヴァー・ピルスナー(フリーラント地方イェヴァー・ドイツ)

ビールは黄金色が当たり前と思われがちですが、実は19世紀前半までは濃色なビールがほとんどでした。しかし、1847年にチェコで誕生したピルスナーは実に美しい黄金色。味はもちろん、世界中がその色にも魅了され広まることになりました。
それに対抗するべく誕生したのが、ジャーマン・ピルスナーで1934年に生まれたイェヴァー・ピルスナー。ドイツ北部発祥のジャーマン・ピルスナーの代表的なビールとして、今も世界中で愛され続けています。
テトナング種のアロマホップを贅沢に使い、ビール本来のさわやかな苦味と雑味も少ないドライな口当たり。「ドイツで一番苦い」とも評されるビール。暑い夏にこそ爽やかに飲みたいビールです。

イギリス生まれのIPAがアメリカで確変! 世界に革命を起こす

IPAの正式名称は、インディア・ペール・エール。18世紀末、植民地のインドへイギリスから船でエールビールを運んだ時のこと。長い航海の間にビールが腐敗したため、なんとか品質を保ち運ぼうと殺菌作用のあるホップを多量に使って醸造し生まれたビアスタイルです。
その後、1960年代にアメリカでクラフトビールブームが起こり、西海岸を中心にホップの柑橘系の香りを楽しめるビールが登場。
「その魅力をもっと味わいたい」と、さらに大量のホップを使うビールがどんどん醸造され、苦味も香りもインパクトのあるアメリカンスタイルのIPAが世界中で大人気となりました。
それは“ビール純粋令”を500年間守りつづけるドイツや、独自のビール文化を歩んできたベルギーなどのビール大国にも影響を与え、とうとうそれらの国でもIPAのビールを醸造。IPAが世界を席巻することになりました。

私がIPAにハマったのが、志賀高原ビールの志賀高原IPAです。
友人のブルワーと一緒に、ここの自家栽培のホップ畑を見に行ったことがきっかけで、2010年から北海道でワイナリーを開いた知り合いのブドウ畑の一角でホップを育ててもらっています。毎年そのホップを自分たちで収穫しすぐに発酵タンクに投入する、特別なIPAを友人のブルワーに造ってもらいます。
フレッシュなホップで造る、季節限定のハーヴェストブリュービールは最近少しずつ盛り上がっていて、これからビールの“ボジョレーヌーボー”になるかもしれません。

▲(右)IPAは、黄金色からやや濃色がかったものまでさまざま。軽やかに香りを楽しめるセッションIPAも昨今人気です
▲(左)北海道の畑で収穫した摘みたてのホップ。あたり一面がフレッシュな香りに包まれて、最高のひとときです


嬬恋高原ビール 群馬麦酒 つまぶるIPA(群馬県嬬恋村・日本)

1997年(平成9年)、浅間山を正面に望む場所で創業した浅間高原ブルワリー。地元に根ざしたビール造りをモットーに、当初から原料に使うホップは自家栽培のみで醸造しています。
さらに、この群馬麦酒シリーズは嬬恋産自家栽培大麦を自社で麦芽にして原料100%で使用。群馬産原料のみという、まさに群馬の実り100%ビールなのです。
つまぶるIPAは、カスケードホップのフローラルでシトラスな香りがあり、ビールを口に含むと麦芽の甘さとインパクトのある苦味が口いっぱいに広がります。
大地の力強ささえ感じる美味しさは、テロワールのビールと言って過言ではありません。

ヴェデット・エクストラ IPA(アントウェルベン州ブレードンク・ベルギー)

中世から続くベルギービールは、1,000種類上あり、今も変わらぬ製法で造り続けられているものが多くあります。
そんなビールの迷宮・ベルギーで1871年から創業するデュベル・モルトガット醸造所が、2014年春に醸造をスタートしたヴェデット・エクストラIPA。「あのベルギーがIPA!?」と、日本に輸入されるや否や話題騒然となりました。
ホップを多用するアメリカンIPAのエクストリームな味わいに比べ、このビールをひと言で表現するなら“バランス”の美味しさ。
シトラスや花、そして若草のような香りにグレープフルーツのような爽やかな苦味と、キャラメルのような優しい甘さが楽しめ、休日のランチにもピッタリ。IPAを初めて飲む人にもすすめたいビールです。

料理とのペアリングでもっと美味しいビアライフを

ビールの魅力は、料理でさらに広がります。ピルスナーにイチオシなのが、ジャガイモを使った料理。ペアリングには、生まれた国同志のものを合わせる方法があり、ピルスナーの故郷・ドイツやチェコには、ジャガイモ料理が数々あります。
例えば、ポテトサラダ。パクチーをトッピングすれば、ホップの効いたピルスナーとの相性も抜群で、いぶりがっこを加えればピルスナーだけでなくシュバルツなどの黒ビールにも合わせたくなります。
また、IPAには断然、肉料理。ホップの苦味が強いほど肉汁のボリュームをすっきりさせて、ホップの華やかな香りは肉に風味も加えます。
ビールに合わせて料理を選ぶもよし、「この料理ならあのビールを飲もう!」など、そんな一歩先いくビアライフを楽しんでみてください。


【ライタープロフィール】
ビアジャーナリスト 宮原佐研子

日本ビアジャーナリスト協会所属ビアジャーナリスト、日本パンコーディネーター協会認定パンコーディネーターとして、雑誌『ビール王国』(ワイン王国別冊)、食のキュレーションサイト『ippin』、webマガジン『ビール女子』他で執筆中。
日本パンコーディネーター協会主催世田谷パン大学でパンとビールのペアリング体験講座も開催。

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