チーズ初心者まずはここから!チーズの基礎知識とタイプ別チーズ案内
今回はチーズプロフェッショナルの山田好美(やまだよしみ)さんにご教授いただきながら、6種類のチーズを食べ比べてみました。
こんにちは、ライターのranranです。
お酒のおつまみや食後のデザートとして食べられているチーズ。
私はチーズが大好きで、コンビニやスーパーで買ってはよく食べています。
そんな私のチーズライフですが、最近イタリアンレストランやおしゃれなバーで出てくる本格的なチーズも気になっています。
ただ、種類が多く、どんな違いがあるのかもわからないので、なかなか一歩が踏み出せません。そこで、今回はチーズプロフェッショナルの山田好美(やまだよしみ)さんにご教授いただきながら、6種類のチーズを食べ比べてみました。
フランス人は日本人の12倍チーズを食べている!?
山田好美(やまだ・よしみ)
チーズプロフェッショナル協会、チーズ検定講師。フランスチーズ鑑評騎士、チーズプロフェッショナル。英仏語講師として活動する中で現地のワイナリー、チーズ生産者を訪れるようになりより確実な知識をと資格を取得。ワインスクール「レコール・デュ・ヴァン」ではチーズ講師としても教鞭を振るう。
ranran:今日はチーズに詳しくなって、友だちにドヤ顔でチーズの知識を語れるようになれたらいいなと思っています。よろしくお願いします!
山田さん:よろしくお願いします!まず最初にranranさんは普段、どんなチーズを食べていますか?
ranran:コンビニによく売っているようなキャンディチーズとか割けるタイプのチーズをよく食べています。
山田さん:なるほど。プロセスチーズを食べることが多いんですね!
ranran:プロセスチーズ…ですか?
山田さん:はい。チーズには大きくわけてナチュラルチーズとプロセスチーズの2種類があります。ナチュラルチーズは時間の経過とともに熟成が進み、風味が変化していくものを指します。一方で、プロセスチーズは保存性を高めるためにナチュラルチーズを加工したもの。こちらはスイスで発明されたチーズで、アメリカを経て戦後に日本に持ち込まれ、給食でも出されるようになりました。日本人に馴染み深いチーズともいえます。
ranran:へえ〜!じゃあ私が普段食べているチーズは加工されているものなんですね。では、日本で食べられているチーズは、プロセスチーズが多いんでしょうか?
山田さん:実はそうでもないんです。もちろん、日本は工場製のチーズが多いので、プロセスチーズもたくさんありますが、2000年ぐらいから輸入ナチュラルチーズの量が増えたのと、近年では国内で生産されることも多くなってきたため、プロセスチーズより多く消費されているんです。
ranran:そうなんですね!ちなみに日本人はどのぐらいチーズを消費しているんでしょうか?
山田さん:日本国内のチーズ消費量は年々増えていて、日本人1人当たりの年間消費量(2016年)は約2.2kgとなっています。
ranran:2.2kg…。あまりピントこないですね…。
山田さん:1日平均6gほどなので、キャンディチーズ一粒ぐらいですね。ではチーズの消費量世界一位はどこだと思いますか?
ranran:えーどこだろう…!やっぱりピザの上にたくさんチーズを使う、イタリアでしょうか?
山田さん:惜しい!イタリアも消費量は多いのですが、イメージとしてはチーズ単体というより、料理の材料として使われている感じ。世界1位は実はフランスで、1人当たりの年間消費量(2015年)は26.8kgとなっています。
ranran:12倍ですか! フランスにチーズのイメージはあまりなかったんですが、フランス人はなんでそんなにチーズを食べるのでしょうか?
山田さん:フランスの食事にチーズは欠かせません。家庭でも毎日の夕食の最後、デザートの前に必ず「チーズプラトー」というチーズの盛り合わせを食べています。そういう食文化もあり、消費量が多いんだと思います。
チーズは8000年前から存在する!?
ranran:チーズの発祥もヨーロッパなんですか?
山田さん:有力な証拠があるのはメソポタミア。今のシリアやイラクのあたりですね。そこから西へ伝わってヨーロッパで定着したようです。正確な年代は分かっていませんが、今から8000年くらい前にはチーズのようなものがあったんじゃないかと言われています。
ranran:8000年前ですか!そんなに前からチーズはあるんですね。
山田さん:そうなんです。ローマ時代になるとチーズは栄養価が高くて保存が効くので、戦いにも持って行ったそうです。その頃のチーズってどんなものだと思いますか?
ranran:冷蔵技術がないから、臭いがキツいとか…?
山田さん:いい線いってますね!そう、冷蔵技術がないので、より長く保存するために、塩をたくさん使わないといけなかったんです。日本でいう漬物と同じ発想ですよね。だから、ものすごくしょっぱかった。それが最古のチーズのひとつである『ペコリーノ・ロマーノ』です。実は今でも食べることができるんですよ!
ranran:へえ〜いつか食べてみたいです! では日本にチーズが伝わったのはいつごろなんでしょうか?
山田さん:日本に最初に伝わってきたチーズは『蘇(そ)』と呼ばれるもので、飛鳥時代に伝わってきたといわれています。滋養強壮の高級なお薬として天皇や貴族に献上されていましたが、武士の時代には製造されなくなってしまったようです。
ranran:チーズってびっくりするほど歴史のある食べ物なんですね。メソポタミアとか飛鳥時代とか、思わず歴史の授業を受けているような気分になってしまいました。
チーズ初心者におすすめ!6種類のタイプのチーズを食べ比べ
チーズの奥深さを教えていただいたところで、次は実際にチーズを食べ比べていきたいと思います。
今回食べ比べるのは、すべてナチュラルチーズ。チーズ初心者におすすめの食べやすいチーズを6つのタイプに分けてセレクトしてもらいました。それぞれのチーズの特徴や相性の良いお酒や食べものをまとめていきます。
フルーツとの相性抜群! フレッシュタイプのモッツァレラ
山田さん:こちらはフレッシュタイプのチーズ、『タカナシ乳業』のモッツァレラです。フレッシュタイプは熟成させないチーズで、最近、日本で人気がある種類ですね。このモッツァレラはもちもちした食感が特徴。味はあっさりしているので、フルーツと合わせてデザートにしたり、そのまま前菜として食べることもできます。
ranran:パクッ!おー!ミルクの風味とイチゴとの相性が抜群です! チーズってこんなにフルーツとは意外ですね。全然クセがないし、これなら「チーズの臭いがダメで…」という方でも食べれる気がします!
フワフワでバターのように濃厚! 白カビタイプ
山田さん:続いては、白カビタイプのチーズを食べてもらいましょう!『サンタンドレ』という名前のチーズで、ふわふわした美しい白カビが特徴です。
ranran:本当だ!!! 表面の白カビがふわふわしている!
山田さん:サンタンドレは生クリームを加えて作られているので、すごく食べやすいですよ! どうぞ召し上がって。
ranran:超絶まろやかでクリーミー! 味はバターとチーズの間みたいな感じです。白カビって初心者にはハードルが高そうな響きですが、サンタンドレは全然そんなことないですね。
納豆の親戚!? ウォッシュタイプのチーズ
山田さん:ウォッシュタイプはその名の通り、表面を洗いながら熟成させたチーズです。中がとろとろでマイルドな味わいですよ。この『ピエダングロワ』はウォッシュの中でも特に柔らかくて食べやすいと言われています。
ranran:うわあ…よく伸びるチーズですね。表面がフワフワで、中身がとろっとろです。このままチーズフォンデュができちゃいそう!
山田さん:ウォッシュタイプは納豆に使われている菌と同じような種類のものを入れて作られているので、もっとネバネバした感じのチーズもあるんですよ。
ranran:味はさっきのサンタンドレをもう少しオイリーにした感じで、しっとりとしていて香りが少し独特!パンやポテトと一緒に食べたいチーズです。
山田さん:そうですね!コーヒーなんかとも相性がいいと思いますよ。
個性派揃いの青カビタイプ!あるものと一緒に食べるとマイルドに?
山田さん:次は青カビを使って熟成させているチーズです。しょっぱいものやピリピリ感のあるクセの強いチーズが多いですね。
ranran:ついに、青カビが…。チーズ好きとはいえ、青カビはなかなかハードルが高いです。
山田さん:今回は初心者に向けて、マイルドで食べやすい『アトリエドフロマージュ』のチーズを選んだので大丈夫なはず。さあ、召し上がってみてください。
ranran:わわ! マイルドすぎて拍子抜けしてしまいました…。後味のほろ苦いナッツ感とカビのしゃりしゃりした食感が楽しくてクセになりそうです。
山田さん:そうでしょ? 次はドライフルーツと一緒に食べてみてください。
ranran:あっ、マイルドレベルが急上昇しました!マイルドさが増しつつ、ドライフルーツの甘みがチーズのほろ苦さを引き立ててくれて、一気に大人っぽい味になりました。
チーズ界のツンデレ!? ヤギのミルクで作ったシェーブルタイプ
山田さん:ヤギのミルクで作るシェーブルチーズです。これは『サント・モール・ド・トゥーレーヌ』というフランスのロワール地方で作られているチーズで、表皮に木炭の粉がまぶしてあります。白くなっている部分は酵母(ジオトリカム)です。
ranran:今日の中で一番、見た目がイカツイですね…。しかも、今日の中では臭いが一番強いかも…?食べれるかな…。
ranran:パクッ。これは…一番好きかもしれない!表面はクセがあって、ツンとした感じなのに、中はミルクの味が強くて…チーズ界のツンデレかもしれない。サンタンドレがバターっぽかったのに対して、シェーブルチーズはヨーグルト寄りな気がします。
山田さん:サント・モンド・トゥレーヌは同郷のワインである『シノン』という銘柄がおすすめですよ。
日本酒にも合うチーズ!? ハード・セミハードタイプ
山田さん:水分が少なめで他のチーズよりも比較的硬いのがセミハードやハードと呼ばれるタイプのチーズです。この『ミモレット』は側面にコナダニがついているので切り落として食べます。
ranran:カビもインパクト大きかったですが、ダニもなかなかすごいですね…。
ranran:パクリッ。おっこれはご飯がほしくなる味です! 色もですけど、味もすごくカラスミっぽいですね。クセは強くないんですけど濃い味わいで、香ばしい甘みも感じます。
山田さん:熟成が進むともっとカラスミっぽさが強くなっていきます。日本酒なんかも合うと思います。
今回食べ比べしたチーズをチャートにまとめてみたので、ぜひ参考にしてみてください!
また、それぞれのチーズと相性のいいお酒や食べものも教えていただきましたので、ぜひご参考にしてみてください!
一緒に合わせるお酒や食べもので、の味の雰囲気は大きく変わる
ranran:山田さん、いろいろと教えていただき、ありがとうございました!最後にチーズを楽しむ上で大事なことを教えてください。
山田さん:やはり何を選ぶかが大事だと思います。1種類じゃなくてフランスのプラトーのように何種類も用意すると、本格的なチーズの楽しみ方ができると思います。また、一緒に合わせるお酒や食べ物でもチーズの味の雰囲気は大きく変わってくるので、そこもいろいろと試してみると面白いと思いますよ。
ranran:本日はチーズについて詳しく教えていただき、ありがとうございました! 自分でもいろんなチーズを食べ比べながら楽しんでみたいと思います。
今回食べ比べたチーズはどれも食べやすく、もっとクセのあるチーズにも挑戦してみたいという好奇心が湧いてきました。山田さんに伺ったところ、今回紹介したチーズの次のレベルにいきたい場合は「無殺菌乳」というチーズを探してみるとよいとのことです。無殺菌乳で作られたチーズは、作られた土地の個性が反映されているチーズなんだそう。
これを機に、どんどんチーズ沼にハマっていきそう…!!
ぜひみなさんもこれを参考に、チーズ道を歩んでみてくださいね!
(ライター/ranran 編集・カメラ/高山諒+ヒャクマンボルト)